上田ささや 社長の日記

長野県上田市の結婚式場ささやが発行している月刊『ささやタイムズ』。社長が書く名物コラムをブログで公開いたします。 また、日ごろ考えていることを不定期に掲載いたします。

見えないところでの行動

 そもそもインターネットは匿名性が高いものではありますが、実に数多のブログが匿名で書かれています。私は実名を出していますので、次はどんな批評が来るだろうかといつも心配しながら書いております。父には私のブログは少々生意気に見えるようで、お客様に対して失礼になることがあるから、やめたほうがいいと言います。しかし、私としては、僭越ではございますが、おもしろい文章を書いて少しでもお客様のお役に立ちたいなと思って、あえて書いていることなのです。
 少し気になるのは、ネット上で匿名のまま他人の悪口や不確かな情報を流している場合です。現実の社会ですと、悪口などを言えば、それを言っている人の信用が疑われることになりますので、言う人は相当考えた上で発言をすることでしょうし、聞く側も注意深く判断をいたします。しかし、インターネット上では、人を介さないがために、根拠の不十分な情報が文字としてあっという間に広まってしまうことがあるのです。
 誠実とは二面性のないことだといいます。以下の文章は『7つの習慣』からの引用です。
「誠実さを示す重要な方法のひとつは、その場にいない人に対して忠実になることである。そうすることで、その場にいる人々との間に信頼が育成される。その場にいない人を弁護することは、その場にいる人との信頼を保つことになる。」
 この文章から考えたいことは、インターネット上には実際の人間が誰もいないからこそ、そこにいないすべての人々に対して忠実でありたいということです。社会のなかでは発言出来ないことをネット上で匿名で発言するのなら、それこそ二面性があるというものです。
 昔の話で恐縮ですが、大学生の頃、日曜日の静かな夜に一人で町を歩いていましたら、短い横断歩道で歩行者の赤信号に引っかかりました。車は走っていませんでしたし、短いのですぐに渡り切れるのですが、その時私は暇でしたので、交通法規を守るためというより、何となく歩きを止めて信号が変わるのを待っていました。しばらくすると、お父さんとその手に引かれた小さな女の子が後ろから私に追いついて、信号を無視して渡ろうとしました。
 女の子は、立ち止まっている私の姿を見たのでしょう「信号、赤だよ。渡っちゃいけないんだよ」と言いました。お父さんは「いいんだ!来なさい」と言って、女の子を無理に引っ張りました。女の子は「え〜あの人、信号待っているよ〜」と言いながら、私に申し訳なさそうに夜の街へ消えていきました。
 私はそのお父さんに馬鹿にされた気がして少し悔しかったのですが、そんなことよりも、お父さんはあの時だけでいいから、形だけでもいいから信号待ちをしてくれたら、あの子のためによかったのにと今でも思い出す出来事です。 
 
『7つの習慣』スティーブン・R・コヴィー著(キングベアー出版)

自衛隊と製鉄所

 夜寒が身にしみる今日この頃でございます。皆様いかがお過ごしでございましょうか。平素は格別のご厚情を賜り、心より御礼申し上げます。誠にありがとうございます。
 さて、先日、ある経営者団体の勉強会で普段あまり行くことの出来ない場所二箇所を視察してまいりましたので、ご報告いたします。
 まずは、千葉県船橋市の陸上自衛隊習志野駐屯地第一空挺団です。空挺というのは地上部隊が航空機で敵陣へ乗り込むことを意味し、いわゆる落下傘部隊のことです。この部隊は自衛隊の中でも優れた隊員が集まるとのことで、部隊のサブタイトルとして「精鋭無比」が掲げられていました。
 駐屯地の中で最も目を引くのは84メートルもの高さがある降下塔です。この塔の頂上部は放射状に4本に枝分かれしており、その先端に吊り下げられた隊員は落下傘を開いた状態で切り離されます。これが実際に飛行機から降りる前段階での最終的な模擬訓練となるそうです。見上げるだけで、その高さに恐怖感を覚えました。
 昼食は隊員の方々と同じ食堂にて頂きました。列に並んで自分で食事をとっていきます。この日のメニューはご飯、澄まし汁、焼き鯖の味噌ソースがけ、きんぴらごぼう、白菜の漬物、大学芋でした。素朴なメニューですが、栄養のバランスがよく、量も多く、何よりおいしかったです。こういうメニューを食べていれば、体がたくましくなるような気がいたしました。その他「空挺館」という資料館やいろいろな訓練施設を見せていただきましたが、いつ起こるともわからない戦闘、自然災害、国際派遣などに対して、常に緊張感をもって準備してくださっていることがよくわかり、ありがたい気持ちになりました。いま防衛省はなにやらきな臭く、国会で証人喚問も行われるようですが、こことはあまりにも遠くに離れ過ぎた事務方の所業ではないでしょうか。
 次に視察しましたのは、新日鐵の君津製鐵所です。かつて鉄鋼は産業の米と言われ、日本の高度成長期を支えてきました。現在ではアジアの国々の経済成長が続いているため、新日鐵は好業績です。君津製鐵所は三基の高炉をもち、同社内で最大の年間約一千万トンの粗鋼を生産しているそうです。
 実際に内部を見ることが出来たのは圧板工場です。ここで行われているのは赤く熱せられた粗鋼をローラーではさみ、要請された形に製品化していく工程です。コンピュータ化され、人影のない工場に、鉄がローラー上を流れる音、鉄に水がかかって蒸気のあがる音、鉄が機械にあたるドスンドスンという音が響いています。鉄はローラー上を縦に横に面白いように踊り、出口ではすっかり冷やされて、銀色の薄く長い板状になって出てきました。鉄を水で冷やす最終の工程では、その冷やし方の調整によって鉄の強度がだいぶ変わるため、高い技術が必要だそうです。いまや我が国は粗鋼生産量では中国に大きく差をつけられてしまいましたが、このような技術は、他国ではなかなか出来ないものだそうです。雨漏りがして薄暗い古い建物で、鉄だけがボーっと赤く光っていました。なんだか日本の古きよき高度成長期にタイムスリップしたような気になっておりました。
 私は20歳代の頃、しばらく千葉県で働いていたことがあり、そのときに習志野では落下傘の降下をときどき遠くから見ていましたし、君津では広大な工場に並行する国道16号線をよく車で走ったものです。当時興味がありながら近づくことが出来なかったものが、15年も経ってから両方を同時に見学する機会に恵まれたということに不思議な感じがいたします。自衛隊と製鉄所という全く違う二つの組織ですが、仕事の内容は昔と比べてそんなに大きくは変わっていないのです。企業寿命15年説さえとなえられる昨今ですが、必要とされるものは、少しずつ形を変え、環境に適応しながら、いつまでも必要とされるのであろうと思います。