心理的な罠とマーケティング
新春を迎え、ご挨拶申し上げます。旧年中は格別のご厚情を賜り、誠にありがとうございました。本年もご指導ご鞭撻のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。
さて、年頭にあたり、禁煙の誓いを立てた方もおられるのではないでしょうか。私は煙草は吸いませんが、ご自分の責任で喫煙を楽しまれる方に対しては中立でございます。
私の友人のWさんは二十年近くにわたって喫煙をしてきたそうです。ところが、三年ほど前、ある本を読むことにより、きっぱりと禁煙ができたというのです。喫煙家の方とお話をすると、健康に影響があることはわかっていても、なお喫煙を継続される方が多いように思います。つまり、健康被害を強調して、禁煙のアプローチをしてもあまり成果が出ないのです。子供のころから彼を知っている私としては、彼が本を読むだけで禁煙ができたことを、俄かには信じがたく、いったい何が書かれているのか、その魔法のような本に興味を覚えました。
その本の表紙や袖には「読むだけで絶対やめられる」「精神力はいらない」「禁断症状がない」「太らない」「ヘビースモーカーほど簡単」などとすごい謳い文句が列挙されていました。本の内容については、人によって感動する箇所も違うことでしょうし、いろいろな解釈があると思いますので、ご興味のある方はぜひご一読いただきたいと思います。
この本には、煙草は本当はおいしくない、煙草を吸ってもリラックスはできない、というような、喫煙者の常識を根本から覆すような説明がたくさん出てきます。簡単に言ってしまえば、喫煙というのは、煙草は世にもすばらしいおいしい嗜好品であるという心理的な罠にかかっている状態だというのです。したがって、禁煙するためには、煙草の効能の心理的な呪縛からの解放が必要なのです。(以下も含めてあくまでも私なりの解釈です。)
実はこのコラムで私は煙草の話をしたかったのではないのです。私は禁煙目的ではないので冷静に読みました。そして、この本の裏に流れているものは、個人が企業等のマーケティング(広い意味での広告宣伝、販促活動とします)に巻き込まれないようにするための対策ではないか、ということに、はたと気がついたのです。(もちろんそんなことは一言も書いてありません。)
最近は煙草のテレビCMは規制等により随分少なくなりましたが、いくつかを思い出すことはできます。またポスターの記憶もあります。タキシードを着た欧米人がニューヨークの摩天楼らしきパーティー会場で女性に囲まれ、かっこよく煙草を吸うシーン。あるいはカナダの雪山で青空をバックにさわやかに煙草をふかしているシーン。煙草を吸うとこんなにさわやかで、かっこよく、楽しくなれるんだと思ってしまいますね。
また、おしゃれでかわいいパッケージの煙草もよく見かけます。そのような箱を見たら、女性は飲食店などに行ったときに、そばにおいておきたいと思ってしまうのではないでしょうか。
これらを考えたら、煙草だけでなく、すべての広告やテレビCMが見えてきました。あるCMに出演したことをきっかけとして知名度が上がり、人気が出てきたタレントがいます。誰もが知っている面白い内容のCMがあります。皆様はそれらがどこの企業のものなのか、簡単に答えられると思います。そして、自然に好感をもってしまいます。もうこの時点であなたはマーケティングの呪縛にはまりつつあるのです。
広義の意味で考えるなら、いまやマーケティングをしない企業などないはずです。企業経営に不可欠の手段ですし、これが企業や消費者や国の利益につながっていきます。しかし、言われるがままに受け入れるのではなく、しっかりと本質を見極めねばならぬということです。そうしないと、マーケティングの思う壺ですね。
今年も皆様方にとって、すばらしい一年でありますことをお祈りいたします。
参考文献:『禁煙セラピー』(アレン・カー)
KKロングセラーズ
平成十九年一月一日 米津仁志
さて、年頭にあたり、禁煙の誓いを立てた方もおられるのではないでしょうか。私は煙草は吸いませんが、ご自分の責任で喫煙を楽しまれる方に対しては中立でございます。
私の友人のWさんは二十年近くにわたって喫煙をしてきたそうです。ところが、三年ほど前、ある本を読むことにより、きっぱりと禁煙ができたというのです。喫煙家の方とお話をすると、健康に影響があることはわかっていても、なお喫煙を継続される方が多いように思います。つまり、健康被害を強調して、禁煙のアプローチをしてもあまり成果が出ないのです。子供のころから彼を知っている私としては、彼が本を読むだけで禁煙ができたことを、俄かには信じがたく、いったい何が書かれているのか、その魔法のような本に興味を覚えました。
その本の表紙や袖には「読むだけで絶対やめられる」「精神力はいらない」「禁断症状がない」「太らない」「ヘビースモーカーほど簡単」などとすごい謳い文句が列挙されていました。本の内容については、人によって感動する箇所も違うことでしょうし、いろいろな解釈があると思いますので、ご興味のある方はぜひご一読いただきたいと思います。
この本には、煙草は本当はおいしくない、煙草を吸ってもリラックスはできない、というような、喫煙者の常識を根本から覆すような説明がたくさん出てきます。簡単に言ってしまえば、喫煙というのは、煙草は世にもすばらしいおいしい嗜好品であるという心理的な罠にかかっている状態だというのです。したがって、禁煙するためには、煙草の効能の心理的な呪縛からの解放が必要なのです。(以下も含めてあくまでも私なりの解釈です。)
実はこのコラムで私は煙草の話をしたかったのではないのです。私は禁煙目的ではないので冷静に読みました。そして、この本の裏に流れているものは、個人が企業等のマーケティング(広い意味での広告宣伝、販促活動とします)に巻き込まれないようにするための対策ではないか、ということに、はたと気がついたのです。(もちろんそんなことは一言も書いてありません。)
最近は煙草のテレビCMは規制等により随分少なくなりましたが、いくつかを思い出すことはできます。またポスターの記憶もあります。タキシードを着た欧米人がニューヨークの摩天楼らしきパーティー会場で女性に囲まれ、かっこよく煙草を吸うシーン。あるいはカナダの雪山で青空をバックにさわやかに煙草をふかしているシーン。煙草を吸うとこんなにさわやかで、かっこよく、楽しくなれるんだと思ってしまいますね。
また、おしゃれでかわいいパッケージの煙草もよく見かけます。そのような箱を見たら、女性は飲食店などに行ったときに、そばにおいておきたいと思ってしまうのではないでしょうか。
これらを考えたら、煙草だけでなく、すべての広告やテレビCMが見えてきました。あるCMに出演したことをきっかけとして知名度が上がり、人気が出てきたタレントがいます。誰もが知っている面白い内容のCMがあります。皆様はそれらがどこの企業のものなのか、簡単に答えられると思います。そして、自然に好感をもってしまいます。もうこの時点であなたはマーケティングの呪縛にはまりつつあるのです。
広義の意味で考えるなら、いまやマーケティングをしない企業などないはずです。企業経営に不可欠の手段ですし、これが企業や消費者や国の利益につながっていきます。しかし、言われるがままに受け入れるのではなく、しっかりと本質を見極めねばならぬということです。そうしないと、マーケティングの思う壺ですね。
今年も皆様方にとって、すばらしい一年でありますことをお祈りいたします。
参考文献:『禁煙セラピー』(アレン・カー)
KKロングセラーズ
平成十九年一月一日 米津仁志




